「おじいちゃんはお寿司が大好きだね」 「うん 毎日でもいいなぁ。
そういえば 昔は、寿司のような贅沢なもんは年に 何回食べたかなぁ、お祭りとお正月 ぐらいしか食べられんご馳走だったなぁ。
おかずに野菜の煮物でもあれば 『わぁー』と喜んだもんだ。
いつもは梅干し、たくわん、味みそ ぐらいでのう。
甘いもんといえば黒砂糖を舐め、 ネズミの糞みたいな切干しの 芋をよくかじったぞん。
麦ばっかしの麦めしや、芋を混ぜた 芋めしはまだましな方で、雑煮なんぞは 汁ばっかしで、箸に何にもかからなんだ。
それに塩辛くてのう、一言でもまずいなんて 言おうものなら、もう食べさせてもらえず 腹がへって、泣いて寝床に潜りこんだもんだった」
「お腹が空くってあまり感じたことないけど、辛い?」
「そりゃ辛いぞん。
だから女川や稲葉山へ、食べれるもんを採りに行くのは、わしらには 手伝いを兼ねた楽しい遊びだった。
*シジミ 女川の西の小びん川の砂地に無尽にいた。
(味噌汁の具、しぐれ煮)
* ツボ 水を張った田んぼなら、どこにでもいてバケツ一杯位はすぐ採れた。
よく洗って茹でて千枚通しで身をだす。
(味噌あえ、三月桃の節句のお供え)
*イナゴ 稲穂のでるころ、布袋の口に竹筒をしばりつけ、掴んだイナゴを竹筒から いれ、袋をいっぱいにする。
(空炒りし飴炊、乾燥し味噌汁のだし)
*春のグミ、野イチゴ、桑の実
*夏の西瓜、トマト、キナウリ
*秋のナツメ、柚、ヤマモモ、柿、椋の実

わしらのおやつは産地直送じゃなくて、産地直口だったぞん。
ワッハッハッハ」

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