日々のくらしの中で

電気は夕方五時から朝七時までの制限された通電で昼間は消えていました。
昼間停電は一ヶ月の定額料金でしたが、町の中心地で一日中、使用できる昼夜線はメータ ー料金でした。
明るさは30Wぐらい、一軒に2〜3灯の電灯を、長いコードでつないで、あっちの部屋 こっちの部屋と引っ張って使っていました。

唯一の乗り物、自転車も一軒に1台くらい。
ラジオを有し、新聞を購読している家は数える ほど。
電話にいたっては学校か駐在所にあるだ けでした。
*常夜灯
当番の家は親兄弟で、お灯明箱を提 げ、川沿いの村中を廻り、村の安全を祈っ て常夜灯に明かりを灯します。
今でも常夜灯の台座には、こぶし大の凹ん だ跡が残っていますが、子供たちが台座に タンポポ、ヨモギの若芽をのせ、餅搗きと いって、石で小突いた遊びの名残です。
食べ物に対する切ない思いが伝わってきま す。
*火振り
松脂を含んだ根っこ(じんた)を 掘ってきて松明にし、夜の田んぼやドンド ンの落ち溜まりへ行くと、松明の明かりに つられて魚が集まってきます。
タタキといって、先端に30本ぐらい の針をはさんだ、1mほどの竹の捕具 で刺して捕まえます。
獲物が多い時は 煮込んで家畜の餌に混ぜたり、大物は 売ることもありました。
*松葉の束
初冬ともなると、稲葉山は 枯れ落ちた松の葉(ご)で一面が茶色 に埋まります。
(ご)を熊手でかき集 めて長方形に固め、縄で縛って束に します。
背負って家に運ぶまですべて 子供の手伝いでした。
(ご)は火をおこすのにもってこい の焚き付けでした。
*膳箱
一人一人自分の茶碗と箸を入れて おく木箱が、決められていて、食事の 時に蓋を逆にして箱の上に重ね、食台 にします。
食べ終わるとお茶や白湯で 食器をすすぎ、そのまま箱にしまいます。
炊事の手間を省く、忙しい農家なら ではの便利な箱ですが、少々不衛生 だったかも。
*置き土産
台風や豪雨で女川が増水する と上の方から激しく流れてくる、丸太 や木切れなどが、橋にぶちあたらない よう男の人が、手に手にとび口を持って 流木を排除します。
だから翌日の堤防は打ち上げられた 木々がいっぱい。
それを拾い集めに 行くのが楽しみだったようです。
リヤカーに乗せてもらったり、引っ 張り役だったり、キャーキャー騒いで 木切れを集めて、家に運び薪にします。
遊びを兼ねた立派な手伝いです。
*運搬の手段
自分の畑で採れた野菜を 積んで町まで行き、下肥と交換して 帰ってくるなどの運びの手段は、す べて人の力によるものでした。
(大八車)小石まじりの地道をカタカ カタ引くのは大変だった。
雨降りの ぬかるみにはまったら、てこでも動 かず後ろに下がって、やっと引き上 げた。
(リヤカー)空気入りの中袋がはいっ たタイヤは、力も余りいらず、引き 易かったが、空気圧が少ないと石の (木炭車)移動は楽だったが馬力がな く登り坂などは降りて後から押した。

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